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『ロスト』に本気で挑む話。

こんにちは、びびんばーです。約1年振りの投稿ですね。
今日は現在製作中の新作SRPG『Guide in Blaze』における最大の挑戦、すなわちユニットの『ロスト』について語ってみたいと思います。
念の為ロストについて説明しますと、味方のユニットのHPが0になった時、そのユニットは死亡し二度と出てこなくなるというルールです。

なぜSRPGにはこんな物騒なシステムがあるのでしょうか。今まで見聞きしたことや自分なりの解釈をまとめてみると、
・戦争のシビアさを表現するため
・緊張感のあるゲームとするため
主にはこんな感じではないでしょうか。
このシステムのパイオニアであろうファイアーエムブレムがまさしくこの精神で作られてますよね。「失った仲間は二度と戻らない」と打ち出し、ひとたび戦いが始まれば時間を戻せない、そして多くのキャラが次々と仲間になるのは、それだけ仲間を失っていくことを想定して作られたと想像出来ます。仲間の死を背負って戦っていく、このシビアさに魅了されたファンも多く生まれる一方、同時にSRPGは敷居の高いゲームというイメージが形成されていったという話をどこかで目にしました。
FE以外の戦史を扱うコンシューマのSRPGでも、ロストのシステムは多く採用されていますね。シビアな世界観を作る上では欠かせないものとして受け入れられているのかと思います。

初期のFEはロストもプレイヤーの体験として大事にしてほしい、という思いがあったように思いますが、時間が経つにつれ製作側とプレイヤーの感覚に変化が生まれてきたと思います。すなわち、全員生存させるのが当たり前!誰一人死なせない!というスタイルが普及し、また製作側もそれを明確に評価するようになったと。具体的には全員生存させないと真のエンディングに辿り着けない、という仕掛けが出てくるようになりました。これにより、ロストは緊張感を生むシステムとしては引き続き機能しながらも、必ずしも戦争のシビアさを演出するシステムとしては機能しなくなってきたと言えるかもしれません。死亡⇒即リセットするようになると、ユニットの死を背負ってゲームを進めるということがなくなりますので。
『新暗黒竜』はこのロストが孕む意味や魅力に再度向き合おうという製作側の意思が感じられました。「滅びの美学」という言葉が印象的でしたね。しかし半ば意図的に仲間を死なせまくらないと隠しマップや隠しキャラに辿り着けないという設計は多くの批判を浴びることになり、残念な結果に思います。
その後のFEではロストがないモードが搭載されるようになっていき、一部の古くからのファンをがっかりさせつつも、プレイヤー層を広げることに成功していきました。これが時代に合わせた結果なのかなと思います。

なぜかロストの歴史?について語ってしまいましたが、元々このシステムに込められていた意味や魅力を整理してみたかったのです。
ここからはフリゲSRPGにおけるロストについて、色々と考えてみたことを綴っていきたいと思います。

フリゲでもロストを盛り込んだSRPGは決して珍しくないですが、どちらかと言うとロストなしのゲームの割合が高いように思います。その理由として、プレイヤーがとっつきやすいようにという意図ももちろんあるかと思いますが、個人的には製作者側の都合が大きいだろうと思っています。つまり、ロストを取り入れようとするとメチャクチャ大変になるんですよね。
以下にロストを入れた時に起こる製作上大変なことを列挙します。
・ロストで詰まないためにユニットを沢山実装する必要がある
・結果ほとんど使われないユニットも多数出やすいというジレンマ
・死亡時のイベント差分を作るのがもの凄い負荷
・結果シナリオに絡むキャラが限定的になりがち。キャラクターの深掘りがしにくい
・同じマップでもプレイヤーごとに状況が大きく変わりやすい為、バランス調整に神経を使う
・ロストしたらリセットする人ばかりなら、結局クリアまでのハードルを上げているだけのルールという現実
・マップセーブありだとロストが生む緊張感というメリットがほぼ意味なしに

色々とありますね。ロストを取り入れると製作の労力が増える割に、犠牲にせざるを得ない要素も多々生まれるという感じです。
上記の中でも最後の項目は、フリゲのSRPGで特に現れやすい現象にも思えます。SRPGStudioも、前世代のシミュツク95も、マップセーブがデフォルトで機能化されている為、製作側もプレイヤーも「ミスしたらロード」が当たり前みたいな感覚を持ちやすい。もちろんそれ前提でバランスを取っているゲームも多くありますが、そのプレイ体験は一手ごとに緊張感が迸る元々のSRPGとは別ジャンルのものになってるかなと思います。(否定する意図ではありません!)

これまでロストを取り入れる大変さを書いてきました。実際私も過去作ではロスト実装は敬遠してきました。ロストが活きるのはそれを楽しんでくれる製作者にとって都合の良いプレイヤーの時だけ、という痛烈な意見も見ました。
それでも、いやだからこそ、今回はロストに挑戦することにしました。
ロストを一要素ではなく、一つのテーマとして本気で向き合ったゲームを作れば、これまでなかった体験をもたらす唯一無二のゲームが作れるのではないかと思ったからです。ロストの持つ魅力を最大限に追及し、またロストが孕む弊害を力技で解決していく。それくらい開き直ると、これまで思い付くことがなかったアイデアや、気付かなかった観点が沢山降ってきました。
例えばこんな観点です。
・戦争を描くSRPGで、毎回味方は犠牲なしで敵は全滅なんて非現実的過ぎる。ロストはある方がむしろ自然
・死が隣り合わせだからこそ描ける緊迫感がある。どんなに熾烈な戦いも、やられても死なないじゃんと思うと途端に陳腐に見えてくる
・ロストがあるからこそ、死なせたくないと思うような仲間達の描写をしなければいけない
・ロストを味方の損失と描くのだけでは勿体ない。シナリオ的にもシステム的にも生き残った者に「背負わせる」ことで意味が大きく変わる
・味方を死なせる選択、あるいは誰を死なせるかという選択を戦略の中に組み込む発想もあり

なんだか悪魔的な観点ばかりに見えるかもしれません…
しかし一方で、ちょっとワクワクもしてこないでしょうか。本気の物語、本気のゲームに挑む機会、そしてプレイヤーの数だけ仲間達の運命が存在する、そんな無二の体験を提供出来るのではないかと思っています。

こういうゲームを作ろうとすると、自ずと決まってくる要素があります。
すなわち、緊張感のある戦いにする為、敵と味方の力は拮抗したものになります。やるかやられるか、という場面も出てきますし、そこでミスしてもロードしてやり直せば良い、なんていう設計には当然なりません。なので思い通りにいかない、難しいと感じやすいかもしれません。

しかしこうも思います。
攻撃を当てれば敵にトドメを刺せるが、外せば死が待っている、そんな場面で、高い戦果を得る為に危険を冒すか、多少戦果は落ちても安全にいくか、そこを見極め判断していく。その積み重ねで勝利を手繰り寄せていく。これこそ正統派のSRPGの遊び方そのものではないでしょうか。
うまくいけば自分の判断を誇り、失敗すれば思いっ切り嘆く。悔しさでリセットしても良いけど、リセットせずとも仲間の死を抱いて無二の物語が続いていく。大層なことを書いているようですが、本質はかつてのSRPGの姿に回帰しただけだったりします。

とまあ、自分の理想論を長々〜と書いてきましたが、実際のゲームではセーブ&ロードしながら遊べるモードや初心者さん向けモードまで実装しますので、どなたでも安心してプレイ出来ますよ!

安心できる要素?として以下のことはしっかり示しておきたいと思います。
・理不尽な初見殺しや大量増援などはほとんどありません
・ほとんどのマップが10ターン以内に終わるお手軽仕様です
・ロストが多いことで評価が下がったりルートが変わったりということは絶対にしません
・仲間を出来るだけ死なせないように頑張ってほしいと製作者は思っています(汗

最後に、これまで書いてきた、極上の、あるいは地獄のようなSRPG体験をしてみたい方は、ぜひタクティクスモードで『Guide in Blaze』を遊んでみて下さい。(まだ体験版ですが!)

それではまたいつか。


 

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コメント: 4
  • #1

    K@DS (土曜日, 30 1月 2021 02:14)

    ゲーム的な意味でのロスト(喪失)の語源であろう『Wizardry』における、ノーリセットプレイを彷彿させますね。

    蘇生失敗や全滅でロストすることがある
     ↓
    手塩にかけたキャラのロストを敬遠し、ゲームバランスのシビアさもあってリセットが当たり前に
     ↓
    「『死んだらリセット』では、戦闘の緊張感や喪失の悲しみが失われるのでは?」との考え方から、どんな目に遭ってもリセットしないプレイヤーが現れる

    WizにしてもFEライクにしても、どちらが良い悪いではなく原点回帰的な……

  • #2

    びびんばー (土曜日, 30 1月 2021 06:56)

    コメントありがとうございます!
    そうですね、Wizardryは近しいコンセプトだと思います!厳しいルールだからこそ堪らない魅力があるのかと。

  • #3

    ヌルゲーマン (土曜日, 30 1月 2021 20:32)

    とは言え、びびんばーさんのゲームは難しいからなぁ。ミストリアも一番低い難易度で、何とかクリアしましたが、敵が強すぎて、どうやってクリアできたか覚えていないんですよ。今回のゲームも、もちろん一番低い難易度でプレイしているのですが、普通に敵が鬼の様に強いので、5章で止まってしまいました。難しいSRPGSTUDIO作品が流行っていて、そういう作品しか評価されないのは百も承知ですが、これはロスト有り無し以前の話だと思います。不快に思われたらすみません。率直な感想です。

  • #4

    びびんばー (土曜日, 30 1月 2021 21:08)

    >ヌルゲーマーさん
    コメント並びにプレイありがとうございます!
    不快なんてとんでもない!「自分に合わない」というどうしようもない感想より「難しい」という率直な感想の方が参考に出来ますので。
    体験版ではコンセプト重視となってますが、本公開時にはちゃんと難易度を下げたモードも搭載致します。
    個人的には難易度が高いことを売りにしていくつもりではないので、機会あればまたお付き合いいただけますと幸いです。